2026.04.01FOUNDERPHILOSOPHYJOURNAL
29年目に向けて — 婚礼を「文化として残す」ということ
BY 緒方 玲奈
創業28周年を迎えた朝、銀座のアトリエに早く着きました。オフィスにはまだ誰もおらず、窓から差し込む光が、創業時からずっと使い続けている裁断机を照らしています。
28年前、この机を母から受け継いだとき、私はまだ婚礼の仕事を「ビジネス」だと思っていました。良いドレスを作り、お客様を増やし、店を拡げていく。けれど10年目あたりから、自分のなかで違和感が育ってきました。婚礼は、ビジネスの言葉だけでは語れない領域なのではないか、と。
以来、私は社内で「文化」という言葉をよく使うようになりました。文化とは、効率では計れないもの、世代を超えて引き継がれるもの、そして、誰かが意識的に残さなければ消えてしまうものです。婚礼もまた、そのような営みのひとつだと、いまでは確信しています。
29年目、私たちは三つの新しい挑戦をします。一つめは、鎌倉・極楽寺に開業する小さな宿。家族の二拠点目となるような、ゆっくりと時間が流れる場所をつくります。二つめは、サステナビリティ部門の独立。ドレスのアップサイクル、フードロス削減、地域コミュニティへの貢献を、それぞれ専属チームで深めていきます。三つめは、若手プロデューサー育成プログラム。10年後、この仕事を引き継ぐ人たちを、いまから一緒に育てていきます。
28年前、母から受け継いだ裁断机は、いまも現役です。生地を裁つたびに、新しい家族の物語が、この机の上で生まれていきます。29年目も、効率化されない時間を、大切に守っていきたいと思います。